2019-09-07

『生誕250年記念 歌川豊国 −写楽を超えた男』太田記念美術館

9月というのに暑い日が続いてこたえるが、第二回ろじうら的美術探訪(略して『ろ美探』)に行ってきた。場所は原宿、駅から徒歩5分という最高の立地にある、太田記念美術館

ここは、かつて東邦生命相互保険会社の社長を務めた太田清蔵氏の、12,000点に及ぶ浮世絵コレクションから、テーマに応じて内容を変えて展示している浮世絵専門の美術館だ。

今回は、生誕250年を祝した歌川豊国記念の展示会。江戸時代、役者絵では当代きっての名手であった写楽を退け、その後も美人画や合戦読本などの挿絵の分野でも活躍し、一大流派となったという礎の画家だ。

私は、浮世絵は、とにかく絵画的というよりデザインとしての色使いや表現方法、そしてボディワーカーとして見たときの、当時の日本人の素晴らしい身体性にいつも感動しているのだが、やはり本物はすごい。すごすぎる!

『役者舞台之姿絵 まさつや』

今回ももちろん”未学生”のため、一般料金¥1,000で入場。←ちなみに学生だと¥700(涙)。でも、暑すぎる外部から、ひんやりとしかも絵の状態を維持するために抑えられた照明が、異世界へと誘ってくれる。

最初から、靴を脱いで畳の上で鑑賞するという独特のスタイル。そこは、圧倒的な画力で表現された豊国の肉筆画が並んでいた。どうやったら、これを描けるのだろう?

浮世絵は、いつも、どの作品を見ても思うが、今回もまた然り。写真もない時代に、一瞬の自然の移ろいを画面に残すための炯眼に、ただひれ伏すしかない。でも、その前で打ちのめされている場合ではない。本物を見ることのできるありがたさを、自らに取り込まなくては。。。

1階から2階、そして地下へと回廊する展示は、枯山水を模した空間とあいまって、時代を一気に遡らせる。さまざまなジャンルの作品からは、江戸文化の奥深さ、人々の洒脱さが伝わり、祖先もきっとこんな中に居たんだろうと想像するだけで楽しい。

面白かったのは、子犬がじゃれている絵があったのだけど、豊国さん、子犬は、、ヘタ・・・!全然可愛くないっっ!!笑

もう一つは、歌舞伎舞台を鑑賞する大勢の人たちの表情が一人ひとり違って、とってもユニークだった。大口開けて笑っている人や、全然違うことしている人など、時代を超えても中身は同じなんだな、と思うと何だか嬉しかった。

展示の中に、アダチ版画研究所による浮世絵ができるまでの説明があった。浮世絵はプロデューサーたる版元からの依頼により、「絵師(下絵を描く人)」「彫師(下絵を元に、版木を彫る人)」「摺師(実際に色を乗せて行く人)」が分業し、三者が一体となって高度な作品が生み出される。その工程を写真付きで見ることができるのだけれど、本当に気の遠くなるような作業ばかりだ。

見ているお客さまは外国人の方も多かったが、実際に工程を体験できたりするとさらに面白くなるのではと思った。

わたしの場合、油絵などの絵画鑑賞では、まず作品の第一印象を深く感じ取ってから細部に移るということが多いが、浮世絵は逆に細部から全体に移るという逆のパターンをたどるというのが一つの発見だった。

検証したわけではないが、日本という独特の風土から育まれる時空間の捉え方と、大陸的な西洋や中国などとの対比に関係があるのでは、という一つのテーマが浮かび上がった。これは、じっくりと取り組んでみる価値はあると、大きな収穫を得た第二回『ろ美探』となった。

▷第1回ろ美探『高橋秀+藤田桜・素敵なふたり』は、こちら

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